2022/03/23 09:41
akari note : 03
2018.10.25 Full moon
イギリスの赤いポピー

すっかり秋の陽気となり、朝晩肌寒くなりましたね。
この季節になると私はロンドンに行きたくなります。
はじめてロンドンを訪れたのはちょうど今頃の季節。
2度目にひとりで訪れたのも11月で、だからなのか
晩秋の寒いロンドンに愛着があります。
今日のおはなしは、おととしの11月に
ひとりでロンドンを旅したときのこと。
すれ違う人、道ゆく人々が、なにやら胸に
赤いお花のブローチをつけているのです。
女性だけではなく、男性もつけています。
駅の近くにいた警察官の胸にも赤いお花。
ホテルに着いたら、フロントの人もつけているし
テレビをつけるとニュースキャスターもつけている。
これは何だろう??
気になって、気になって、その日はわからず…
*
翌日の朝、近くのスーパーマーケットへ行くと
レジの脇に例の赤いお花が山積みされているのを発見。
紙製の、素朴な造花です。
ここで買えるのかな。欲しいなぁ、と思い
レジのお姉さんにいくらなのかを尋ねると
横にあるチャリティーボックスにお金を入れたら
自由に受け取れるよ、とのこと。

ポピーのたくさん入った箱。スーパーのレジや街角、いたるところに。
さっそく小さな募金箱にコインを入れて、
コートの襟につけてみる。紙のブローチ。
紙のお花なのに、わくわく嬉しい。
その日は、そのまま街を散策しました。
*
カフェで休憩しながら、このお花について調べてみると
POPPY APPEAL(ポピーアピール)という募金活動で
赤いお花はポピーだということがわかりました。

英国では、11月11日は第一次世界大戦の終結を
記念するRememberance Dayという記念日で、
その数週間前から戦没者を追悼する意味をこめて
赤いポピーを身につける習慣があるそうなのです。
なぜ赤いポピーなのかというと、第一次世界大戦の
激戦地であったベルギーで、荒れ果てた土地一帯に
血のように赤いポピーがたくさん咲いていたから。

野生のポピーは、他の植物が枯れたあとの荒野に咲くのだそう。
ポピーアピールの収益金は、戦争で亡くなった
兵士の遺族や、障害を負った兵士の支援などに
使われているとのこと。
そんな重い意味があったとは。
何も知らない東洋人が、かわいいからといって
身につけるのはさぞ滑稽だろうなぁと思いつつ
俄然、その習慣に興味がわく私。
奇しくも、ロンドン滞在中に11月11日を含み
赤いポピーのブローチから、思いがけず
イギリスの歴史を学ぶことになったわけです。
*
戦争には勝敗がつきものですが、
平和を願う気持ちと、亡くなったかたを
悼む気持ちは人類共通のものです。
ポピーというモチーフに託された想いは
優しくて、少しせつなくて、うつくしい。
日本でいうなら、桜のようなお花なのでしょうね。
美しいものを身につけて平和を願う。
それが紙のブローチであったとしても
敬意をこめて「ジュエリー」と呼びたくなります。
紙のポピーをつけている人が一番多いのですが
スワロフスキーのきらきらしたポピーや
毛糸で編んだポピー、七宝焼きのポピーなど
さまざまな赤いポピーを目にしました。






ターミナル駅では、ポピーアピールの募金活動が
大々的に行われていて、ポピーのデザインも
いくつかの種類が存在することがわかりました。

そんな中、募金をして手に入れたのがこちら。

年号入りのピンバッジと、反射板のようなビニール製のチャーム。
多くの戦没者のお墓にもなっている
ウエストミンスター寺院にも行きました。
追悼の赤いポピーがいっぱい。


不謹慎かもしれませんが、
うっとりするくらい美しかった。

戦争にまつわることは、どうしても
暗く重いものになりがちなテーマですが
こんなふうに美しいもので満たすことは
平和への一番の近道なのかもしれませんね。
*
この記事を書いているのは、ひとり旅の2年後。
ふと赤いポピーが懐かしくなって調べてみたら
2018年は第一次世界大戦終結からちょうど100年。
リメンバランス・デーや ポピーアピールは
この時期に渡英しなければ知らなかった習慣です。
お祭りではなく、厳粛な雰囲気がありますから
今後、日本で広く知られる機会もないでしょう。

赤いポピーからさまざまなことを考えました。
あの日、ブローチ可愛い!と感じたことから
こんな記事を綴ることになるなんて(笑)
難しいことを言いたいのではありません。
「かわいい」は凄いのです。
節目の年だからか、Cadburyのチョコレートが
レッドポピーのパッケージになっていました。
Cadburyは濃厚でおいしいので
イギリスに行くと必ず買います(^.^)
ポピーがデザインされた雑貨もたくさんあり
どれも可愛くて集めたくなる。



近いうちにロンドン行きたいなぁ、と思いながら
旅の記録を振り返りながらの満月前夜です。
この時期に渡英される方がいましたら、
ぜひ赤いポピーを手に入れてみてくださいね。
◆ポピーアピールについてのリンク(英語)