2022/03/23 09:42
akari note : 05
2019.02.05 New moon
お箸の国のスプーンリング
スプーンから仕立てたリングは、
アンティークジュエリーのショップで目にしたり
ヨーロッパのジュエリー作家さんがヴィンテージの
カトラリーを加工しているのを見て、知りました。
2019年初の「あかりノート」は、私が銀食器にふれて
その加工に至るまでのあれこれを回想して綴ります。
*
まずこちらは、スプーンリングのきっかけとなった
英国の蚤の市で購入したカトラリーです。
ジュエリーに加工するために買ったのではなく
たたずまいに惹かれて、衝動買いしたもの。
箱の中に無造作に積まれた大量のスプーンとフォーク。
あぁ、ここはお箸の国ではないのだ、と思いながら
ひとつひとつ掘り出しました。楽しかったなぁ。
スプーンの丸みは、日本のものより大きくてまんまる。
フォークの形状はというと、全て違うデザイン。
右のふたつは同じメーカーのものでペアになっています。
帰国して、ウィノールでぴかぴかに磨いてみました。
そうするとだんだん愛着が湧いてきて、
カトラリーについて調べるようになりました。
そうしてわかったことは、
私が購入したカトラリーは全てイギリス製で
EPNSとよばれる洋白製に銀メッキ。洋銀ですね。
ヴィンテージ品だけど、銀無垢ではありません。
(お安かったから当然純銀ではない…)
さらに、小さな刻印がいくつか刻まれています。
これについても調べてみると、ヨーロッパの銀食器と
カトラリー文化の奥深さに驚くばかり。
銀食器に使われる刻印についての詳細な辞典が存在し、
刻印を解読すれば、いつ、どこで、どのメーカーによって
どのくらいの品位で作られたものかが一目瞭然なのです。

※ホールマークの一例。1年ごとに使われる刻印が異なります。
そもそも銀食器はその価格の高さから、
貴族や富裕層のためのものであり
銀食器を持つことはステータスのひとつでした。
そのような存在である銀食器が、どのようなきっかけで
リングに加工されたのでしょう?
*
スプーンリングの歴史を紐解いてゆくと
17世紀頃のイギリス、フランスに由来することがわかりました。
当時の一般庶民にとって、ジュエリーは大変高価なもの。
買いたくても買うことのできない人々は多く、
シルバースプーンの柄を曲げて輪をつくり
それを結婚指輪として贈る風習が生まれました。
ロマンチックですね!
だけど、なんというか、
スプーン本来の役割を思うと…大胆な手法。
それでもシルバースプーンは「幸運のお守り」として
大切にされてきたアイテムですから
愛を伝えるリングに加工し、身につけるのは
あながち間違いではないのかもしれせん。
調べるうちに、妄想がふくらみます。
スプーンリング、作ってみたいな。
*
そんなある日、一式のシルバースプーンを手に入れました。
折り目正しい珈琲店で使われていそうな、
やや小さめの銀製ティースプーン。
日本製(高島屋謹製)のデットストックで、確かなお品。
ひとつだけリングに加工してみました。
すると、これがとても素敵。

海外のスプーンのことばかり考えていたけれど
日本のシルバースプーンもとてもいいなと思いました。
私はレトロな純喫茶や珈琲店が好きなのですが
スプーンリングはコーヒー好きの女子の指にも合いそう。
優美な柄の模様は、スプーンのそれを連想させ
指なじみもよく、存在感があり、ゴツすぎない。

さっそく着用し、商品化に向けてテスト使用を経て
問題なくリングとして使えることがわかり
本日リリースすることになりました。
デットストックのスプーンは5本ありますので
このモデルのリングは、限定5個となります。
(6本組ですが、ひとつは私がサンプルとして所持しています)
装身具あかりの、通常のジュエリーと違う点は
●スプーンという素材の持ち味を生かしたリメイクリング
●ロウ付けとロジウムメッキはあえて施さない
●お好みのサイズにお仕立てして納品
(9号~18号の範囲でのお仕立てを推奨)
素敵なシルバースプーンが入荷したときのみ展開する
「企画ジュエリー」として、初の試みになります。
天然石や貴金属のほか、さまざまな素材から
ジュエリーをつくることに関心がある私にとって
装身具の可能性が広がる嬉しい作品となりました。